議事録

国土交通委員会 2021年4月6日

204-参-国土交通委員会-008号 2021年04月06日

○森屋隆君 おはようございます。
 立憲・社民共同会派の森屋隆でございます。質問の機会をいただいたことに感謝を申し上げます。
 今月から中小の企業でも同一労働同一賃金が適用されるということで、非正規労働者あるいはパート従業員の方の労働条件、待遇が向上される、こういった期待があるわけでありますけれども、一方で、国土交通省が所管する産業、ここが全産業と比べて、やはり人手不足、労働条件あるいは賃金の問題、大きく水を空けられていると、こういうふうに私は思っております。
 前々回も、足立先生の方から建設関係の人手不足あるいは労働条件の質問の指摘があったと、こういうふうに思っています。そういった観点から、私は、今回、交通運輸の関係について少しお聞きをしたいと、こういうふうに思っています。
 質問に入りたいと思います。
 現在の鉄道運賃上限認可制は、総括原価方式を用いています。一九九七年には規制緩和推進計画が閣議決定をされ、他社との競争力強化のためにヤードスティック規制が導入をされました。しかし、このヤードスティックについては、今日において必要以上に私は人件費の抑制あるいは削減に影響を与えている、こういうふうに思っております。
 これまでの制度の検証が行われたことがあるのか、あるいは、この制度はもう既に導入されてから二十四年が経過していることなどから一度検証する必要性があるんではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(上原淳君) お答えいたします。
 ヤードスティック方式は、運賃原価の基準となる営業費の一部につきまして標準的なコストを定めることによりまして、事業者間の間接的な競争を通じた効率化の促進、運賃原価を機械的に算定可能とすることによる企業及び行政における規制コストの縮小、運賃改定に当たっての透明性の確保を目的として、平成九年に現行の算定方式が中小民鉄を除く鉄道事業者を対象として導入されたものであります。
 本制度につきましては、毎年、JR六社、大手民鉄十五社、地下鉄十社の各グループごとの基準単価、基準コスト等を公表し、透明性の確保に努めているところでございます。
 本制度導入後、デフレ傾向が継続したことなどにより、消費税改定に伴うものを除き大規模な運賃改定は実施されなかったことから本制度の具体的な検証は行っておりませんが、地域独占が一定程度残る鉄道事業におきましては、先ほど申し上げたような目的を果たすために引き続き有効な制度であると考えております。
 一方で、委員御指摘のとおり、制度の導入から時間も経過しておりますことから、ヤードスティック方式の具体的な算定の方法や、あるいは昨今、ポストコロナの新しい生活様式に適合した運賃などの議論も出ておりますので、鉄道の運賃制度につきましては、必要に応じて適切に検証してまいりたいと考えております。

○森屋隆君 ありがとうございます。
 導入から二十四年がたっています。そして、今答弁いただきましたように、今回、コロナで、先ほど大野先生の方からもありました、輸送人員が以前のように戻ってこないんじゃないかと、こういうふうに企業はもう予測をしております。テレワークも更に進むんだろうと思います。そういった観点からも、二十四年がたっている中で、それぞれの立場から意見を聞いて、検証の必要性があるのではないかなと、こんなふうに思っています。
 やはり地域独占という、一方では運賃が青天井になってしまうという、こういった危険性もあるのかもしれませんけれども、私は、今の時代の中で、そういったことというのはなかなかやっぱり利用者からも理解が得られないわけでありますから、そういった心配性というのは必要以上にないというふうに、こんなふうに思っています。是非とも一度御検証をいただきたい、こんなふうに思っているところでございます。
 続きまして、トラック関係についてお聞きをしたいと思います。
 トラックドライバーの賃金、これは全産業の標準的な水準に是正をしていこうということで、そういった目的の中で、令和六年三月三十一日まで、これ時限措置かと思いますけれども、標準的な運賃の告示制度が導入されております。既に一年ほどたったかと思いますけれども、その後の効果、状況についてお聞かせをいただきたいと思います。

○政府参考人(秡川直也君) 標準的運賃の告示制度ですけれども、思うように運賃を収受できていないトラック運送事業者の適正な運賃収受の下支えとなる環境整備ということで、ドライバーの労働条件の改善とか安定的な物流の確保ということを目的としております。
 令和三年二月現在、標準的な運賃、最終的には届け出ていただくことになっていますけれども、全国で約三千五百件と、これはトラック事業者全体の約六%に当たっております。この標準的運賃というのを告示をさせていただきましたけれども、まずその制度を理解する、その上で自分の会社の経営分析、それからその適正な運賃を計算していただく、その上で荷主と交渉して届け出るというプロセスが想定されます。
 ちょうど制度がスタートしたときにコロナ禍がスタートしてしまって、この制度をよく理解していただく私どもがやる周知とか、あと荷主側との交渉、そこがなかなか進まないということで、ちょっと数字が上がっていないというのが現状なんですけれども、引き続き、業界団体とか荷主関係の省庁と協力して進めていきたいと思っております。

○森屋隆君 ありがとうございます。
 なかなか浸透がまだされていない、コロナの関係もあるんだと思います。六%ということで、トラック事業者、全国で五万八千とか六万とかというふうに聞きますから、是非、大変いい制度だと思います。よろしくお願いしたいと思います。
 次に、タクシーの関係で何点かお聞かせいただきたいと思います。
 タクシー運賃のダイナミックプライシングが進められていますが、少し懸念されるところがございます。これは、利用者がアプリ操作の有無によって不公平感が出てしまうんではないか。あるいは、タクシーですからメーターによって運賃決まるわけでありますけれども、相対運賃になるわけであって、メーターの運賃がなし崩し的になってしまうんではないか。あるいは、これは私は本当にいまだにこういうことがあるのかなと思うんですけれども、この乗務員の負担、乗務員にこの負担を乗せているということですね。安くなった分を乗務員のところに負担させているという、そういった懸念がありますけれども、現状を教えていただけませんでしょうか。

○政府参考人(秡川直也君) 国土交通省で、政府一体となって規制改革、デジタル化を推進すると、そういう中でこのダイナミックプライシングということも取り組んでいるところでございます。
 このタクシー運賃を需給に応じて変動させるということなんですけれども、例えば、利用者から見ましても、閑散期に割安な利用が可能となるとか、今までタクシーを利用していなかった層の需要も開拓できるんじゃないかということを期待しております。
 今年度は、国の方でも予算を確保しておりまして、ダイナミックプライシングの海外での事例を調査するとか、実際に実車による実証運行を行って課題解決に向けた検討を進めることとしておりまして、そういう実証を、制度設計に当たって、タクシーが公共交通機関としての役割をしっかり果たせるように、御懸念の今御指摘いただいた点も念頭に置きながら検討を進めたいというふうに思っております。

○森屋隆君 ありがとうございます。
 本当に、日本のタクシーというのは世界に誇れるタクシーでありまして、安全、安心、そしてやっぱり丁寧だということがあります。MaaSの推進などもありますから、進めていくということは理解をしております。
 しかしながら、少し間違った方向に行くと、当初から懸念していた、ライドシェアじゃないですけれども、そういった懸念材料が生まれてくるというふうに思っておりますので、是非、導入に向けても慎重にお願いしたいと思っております。ありがとうございます。
 次に、これは我が党の野田先生の方から早くに指摘があったことでございます。これはタクシーの精算方についてでございます。
 都内のタクシー千四百台の調査結果によれば、キャッシュレス決済、決算が二〇一三年に二三・七%だったそうです。しかし、二〇一九年では四六・一%と、この七年間で一・九五倍になりました。手数料は一億二千二百万円で二・〇六倍に膨らみ、経営を圧迫をしています。また、この一年のコロナ禍において、非接触ということもあって、加速度的に増加をしていると、こういうふうに聞いています。
 この問題について今後どのように考えているのか、あるいはまた、ここでも手数料を乗務員に負担をさせていると、こういう話を聞きますが、これは問題ではないんでしょうか。

○政府参考人(秡川直也君) キャッシュレス決済への対応ですけれども、利用者の利便性の向上とか、あと、今御指摘いただきましたように、タクシーにおける感染防止対策という観点からも重要な取組と考えております。
 今数字御紹介いただきましたけれども、現在、法人タクシーの台数ベースで約八五%にキャッシュレス決済が導入されているということを聞いております。
 タクシー事業者は、他の交通モード事業者や飲食事業者等と同じでございまして、事業者の判断によってキャッシュレス決済を導入しておりますけれども、国土交通省では、タクシー事業者が費用負担を少しでも軽減できるように、導入に当たって必要な経費の一部を助成をさせていただいているということでございます。
 また、今御指摘いただきましたキャッシュレス決済などのサービスに係る経費を運転手さんに負担させるような事業者が確認された場合には、これは事業者に対してしっかり指導するということを各運輸局に徹底しております。
 引き続き、タクシー車両におけるキャッシュレス決済の導入の促進のために、必要な取組を進めてまいりたいというふうに考えております。

○森屋隆君 ありがとうございます。
 是非、乗務員、大変コロナで厳しい状況の中で、こういった負担もあっては私はいけないと思っていますので、是非是非御指導の方をお願いしたいと思います。
 そして、タクシーでもう一点お聞きをしたいと思います。
 昨年二月に、四十八地区において運賃改定が実施されました。この運賃改定については、本当に国交省の皆さんに御尽力いただいたことに改めて感謝を申し上げる次第でございます。
 この運賃改定をしなかった、実際にしなかった特別区・武三地区、都内二十三区ですよね、ここが日車営収が大分落ち込んでいると、こういうふうにお聞きをしています。この四十八地区のときに運賃改定をしなかったこの特別区・武三地区の運賃改定が私は必要ではないかなと、特にコロナで厳しいですけれども、この運賃改定は必ず必要だと、こういうふうに思っています。どのように考えているか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○政府参考人(秡川直也君) 今御指摘のありました東京二十三区、あと武蔵野、三鷹地区ですね、武三地区の一部の事業者におきまして運賃改定を求める声が上がっているということは承知してございます。タクシー運賃の改定ですけれども、運賃ブロック内の一定数のタクシー事業者さんから申請があった場合に、認可に向けた手続をスタートすると、ですので、一義的には個々の事業者の判断がまず前提になっているということになっております。
 いずれにしましても、東京・武三地区の運賃改定においては、これは非常に消費者が多いということもありまして、消費者委員会への協議とか、そういうほかの地区にない手続があるのでございますが、国土交通省としては、経済や利用者への影響を十分に考慮しながら検討すべきものと認識しております。

○森屋隆君 ありがとうございます。
 これは七割の事業者でしょうかね、七割の事業者で運賃改定が必要だということがあって、そして申請を出して審査会の方で検討する、これはやはり一年とか二年、申請出してからやっぱり掛かるんでしょうかね。やっぱりそういう中で、コロナが今後どういうふうな状況になってくるか分かりませんけれども、なかなか夜の飲食は人が出ていない、当然、出てはいけないということでありますから、タクシーの方にダイレクトに影響が出ている、そういったこともいろいろ相対的に考慮していただいて、検討課題なんだろうなと、こういうふうに思っています。
 今、鉄道やトラックあるいはタクシーの関係について、毎回ですけれども質問をさせていただいております。これ、国交省が出しているデータですから間違いはないと思っております。是非、委員の先生方にも、もう何回も私の方から質問をしていますからもう本当にこれは分かっていることだと思いますけれども、全産業と比較をしまして、大臣、大型トラックは年間で全産業と比較をして四百四十時間ほど労働時間が長いと、そして年収ベースにおいては百三万円ほど低い。中小のトラックについては、やはり百三十八万円ほど低い。バスについては全産業より三百時間ほど年間で多く労働時間働きまして、九十三万円ほど年収ベースにおいては低い。タクシーにおいては、これは本当に是非改善しなくてはならない。今回、四月一日で、大手タクシー一生懸命新入社員を採って若返りをしていこう、頑張っていこうということも聞いております。タクシーにおいては二百四時間ほど長く働いて年収ベースでは二百一万円ほど低いという、もうあってはならないことだと思います。是非、国交省の皆さんのお力で改善をしていきたいと、こういうふうに思っています。よろしくお願いをします。
 最後の質問になるかと思います。
 これは港湾の質問なんですけれども、やっぱり国交省の中でも大事な所管だと思います。
 実は、港湾労働者といろいろ意見交換をすることがあります。そんな中でお聞きをした課題でありますけれども、国交省の中には交通政策委員会、そして各分科会が定められております。そして、各分科会にはそれぞれ有識者の方々、あるいはその協会の代表の方々、そして労働者代表など、幅広くそのメンバーとして構成をされているかと、こういうふうに思います。
 しかしながら、この港湾分科会には労働者代表が参画していないと、こういうふうにお聞きをしました。そして、よくよくお聞きをしてみますと、この港湾の規制緩和前には、労働者代表というのは入っていたというふうにお聞きをしています。
 そしてさらに、事務方の方々にお聞きをしましたら、それぞれの港がある県にはやはりその委員会がありまして、労働者代表の方が入っていると、こういうふうに聞きました。しかし、この県の委員会は当然県の専権事項でありまして、国の方からこういったことがどうなんだとかアドバイスのような、国が口を出すというか、そういったことができないと、こういうふうなことも聞いております。したがって、港湾労働者が国に対して意見を求めるというか、そういった窓口が直接的にないんだと、こんなふうなお話を聞いております。
 政府は、二〇五〇年カーボンニュートラルなどエネルギー政策を推進していこうということで、目標として挙げております。港湾といえば石炭輸送などが多くありまして、千人ぐらいの方がここに携わっていると、こういうふうに聞いております。そういった観点からも、是非、現場の意見を大切にいつもしていただいています赤羽国交大臣の御所見をお聞かせいただきたいと、こういうふうに思います。よろしくお願いします。

○国務大臣(赤羽一嘉君) 港湾政策の立案に当たりまして、港湾労働者の皆様の現場の意見を伺うというのは大変重要だというふうに私も考えております。
 今そうした場がないという、ちょっと内容は若干正確さに欠けるんじゃないかと思っておりますのでちょっと説明させていただきますが。
 まず、平成十三年の一月以前、港湾審議会というのが存在しまして、そこには全国港湾労働組合の協議会、また、全日本海員組合の代表の方もメンバーとして参加をしていただいておりましたが、この平成十三年一月から、ちょっと港湾審議会というものが、何というか、内容というか目的が少し変わりまして、交通政策審議会の一部である港湾分科会に再編をされた際に、一つは、これこうしたものの簡素化を進めるために委員の数を縮小するということで、それまでは、三十六名以内という中で現実には三十二名の構成でしたけれども、新しい分科会では十五名に縮小になっていると。
 そして、この新しい分科会の目的がより政策的な議論を行うということで、その役割自体が見直されまして、委員の構成も、物流や産業等の分野に関わる有識者、大学の教授の皆さんとかそうした方々を中心として、業界代表の委員につきましては、荷主さん、また海運、また港運等の各分野から一名ずつ選任するという形でスタートをさせていただいております。ちなみに、港湾分野を代表しての一名は、日本港湾運送協会の会長に就任をしていただいているというのが現実です。
 他方で、冒頭申し上げました現場の皆さんの声を聞くということでは、国交省として港湾労組からの年二回の定期的な要望の申入れにはしっかり対応するということに加えまして、昨年の六月からは、二か月に一度、港湾の担当課長等による組合の皆さんとの定期的な意見交換を実施しておるところでございます。現場の皆さんの意見をしっかり反映できるように努めてまいりたいと思いますし、不足があるようであればしっかりと港湾局としても指示をしたいと、こう思っております。

○森屋隆君 大臣、ありがとうございます。
 窓口といえば年二回あり、また、二か月に一回そういった要望を聞いているところがあるということで、これは大変失礼しました。ありがとうございます。
 また、当時は、平成十三年、三十二名いた中で、今回、内容、政策等々のところが変わってきたということで、労働者の参画が余りその目標値というか、そういうところと合わないということなんでしょうかね。分かりました。しかしながら、しっかり労働者意見は反映されている、聞く場所があるということで理解をさせていただきたいと思います。本当にありがとうございます。
 いずれにしましても、特に港湾、そして交通分野もそうですけれども、赤羽国交大臣の方から、声が上がってこなくても、大臣いつもおっしゃっていただいております、国交省の方からプッシュ型で、こっちから現場に足を運んでいろんな意見を聞いているんだと、私はすばらしいことだと思っております。今後とも、そういった大臣の考え方、是非是非いろんな分野で実践していただきたいと、こういうふうに思います。
 本当にありがとうございました。質問を終わります。

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