議事録

本会議 2020年05月20日

○国務大臣(赤羽一嘉君) 持続可能な運送サービスの提供の確保に資する取組を推進するための地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 地方部を中心とした人口減少の本格化、運転者不足の深刻化等に伴って、公共交通サービスの維持確保が厳しさを増している中、高齢者の運転免許の返納が年々増加する等、地域の暮らしと産業を支える移動手段を確保することがますます重要になっております。加えて、交通ネットワークの充実等を図るために、地域経済社会の発展に資する交通インフラを着実に整備していくことも必要となっております。
 このような状況を踏まえ、全ての地域において持続可能な運送サービスの提供を確保するため、地方公共団体が、公共交通事業者等と連携し、最新技術等も活用しつつ、既存の公共交通サービスの改善充実に主体的に取り組むなど、地域の輸送資源を総動員する取組を推進する必要があります。
 このような趣旨から、この度この法律案を提案することとした次第です。
 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。
 第一に、地方公共団体は、国が策定する基本方針に基づき、地域旅客運送サービスの持続可能な提供を確保するための計画を作成するよう努めなければならないこととしております。また、乗合バスの新規参入に係る地方公共団体への通知制度を創設し、地域公共交通サービスの維持確保に向けた議論を深めていただくこととしております。
 第二に、維持が困難となった旅客運送事業の路線等について、地域において多様な選択肢を検討、協議し、地方公共団体が公募により選定した者が地域に最適な旅客運送を実施する地域旅客運送サービス継続事業や、同一の車両を用いて旅客及び貨物の運送を併せて行う貨客運送効率化事業の制度を創設し、国の認定を受けたこれらの事業については、関係法律の特例措置等各種の支援措置を講ずることとしております。また、過疎地等で市町村等が行う自家用有償旅客運送について、地域住民のみならず観光客を含めた来訪者も対象として明確化するなど、その実施の円滑化を行うこととしております。
 第三に、利用者目線による路線、ダイヤの改善や運賃の設定などを促進するための地域公共交通利便増進事業の制度を創設することとしております。また、新たなモビリティーサービスである、いわゆるMaaSの全国への速やかな普及を促進するため、複数の公共交通事業者による運賃の設定に係る手続を簡素化する事業計画の認定制度や幅広い関係者で構成される協議会制度を創設することとしております。
 第四に、交通インフラに対する支援の充実を図るため、多様な関係者の連携による鉄道インフラや物流拠点の整備への資金の貸付けを行うことができることとしております。
 そのほか、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。
 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)
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○議長(山東昭子君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。森屋隆さん。
   〔森屋隆君登壇、拍手〕

○森屋隆君 立憲・国民.新緑風会・社民の森屋隆です。
 ただいま議題となりました地域公共交通活性化再生法改正法案について、会派を代表して質問をいたします。
 まずは、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになった多くの方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、現在闘病中の方々にお見舞いを申し上げます。感染症の終息に向けて、与野党一丸となって取り組んでいくことを申し上げる所存です。
 さて、まずは、検察庁法改正案に、問題について触れざるを得ません。
 政府が準司法官である検察幹部人事に介入できる仕組みを国家公務員法改正案の中に潜り込ませる、いわゆる束ね法案で提出しました。政府のその手法もさることながら、検察幹部の定年延長基準すら示せない武田大臣、森大臣の答弁では到底納得ができません。三権分立を脅かすこの法案に対し、抗議、反対の声はツイッターにおいて各界の人が発信をし、一千万を超えました。
 国民の声に背を向けることができず、政府はついに検察庁法案の今国会での成立を断念されました。しかし、これがただの先送りでは意味がありません。時間が経過しても国民が忘れることはありません。私たち野党は、今後も特例延長の撤回まで、徹底的に闘い続けてまいります。
 そこで、安倍内閣の一員である赤羽国交大臣にあえてお伺いをいたします。
 与野党を問わずコロナ対策に集中すべきところ、無用で不急の法案で世論や国会を大混乱させた責任を、内閣の一員としてどうお感じになっているのでしょうか。誠実な御答弁をお聞かせください。
 法案の審議に当たり、冒頭に、公共交通機関の現場で働いてきた者として、まず二つの質問をいたします。
 一つ目は、二〇一三年に制定された交通政策基本法には、国、地方自治体の連携、協働による施策の推進が明記されているにもかかわらず、少子高齢化や過疎化という社会的構造変化の中で、不採算であっても全国の国民の足として継続してきた公共交通分野に対する政府の取組は、場当たり的であると言わざるを得ないということです。
 二〇一四年の地域公共交通活性化再生法改正において、政府は、地域の多様な主体の連携、協働によって地域公共交通を面的にネットワークとして維持していく方向に大きくかじを切ったはずです。それでも、二〇一八年までに、路線バスは全路線の二%に当たる一万三千二百四十九キロが廃止され、地方鉄道は全国で八百七十九キロ、四十路線が廃止され、日本全国土の約三割が交通空白地帯です。人々の交通権を確保するための地域公共交通を、我が国の交通政策の中心に沿った施策の展開を求めたいと思いますが、国交大臣のお考えを伺います。
 二つ目は、公共交通部門で働く労働者の賃金の問題です。
 今回の緊急事態宣言下においても、公共交通労働者もその責務を果たすために厳しい状況の中で働き続けています。このような状況にかかわらず、自動車運転労働者は、長時間労働かつ低賃金であるという実態が長年にわたり続いています。
 例えば、バス運転者の年間所得は、二〇〇一年には全産業平均五百五十六万円より約十四万円少ない五百四十二万円でしたが、需給調整規制の撤廃後の二〇〇二年以降は一気に落ち込み、二〇〇四年から十五年以上も約百万円近くも落ち込んだまま推移しているのが実情であります。
 このような苦しみをもたらした需給規制の撤廃という過度な競争政策を是正し、少なくとも全産業平均並みの賃金に引き上げていくことが担い手不足を補うための最低条件と考えます。働き方改革が実施されたとはいえ、自動車運転労働者の労働規制の導入は四年も先のことです。
 このような現状がなぜ生まれたのかを踏まえ、自動車運転労働者の長時間労働の是正と、賃金上昇に政府として今何が必要と考えているのか、国土交通大臣に御答弁をお願いします。
 次に、改正案の具体的な内容に入ります。
 国交大臣にお尋ねいたします。
 今回の改正では、地方公共団体による地域公共交通計画、いわゆるマスタープランの作成が努力義務化されることになっています。二〇一四年の地域公共交通活性化再生法改正時の政府のマスタープランの策定目標は、交通政策基本計画においてたったの百件という低さでした。現在、策定数は五百件を超えたものの、市町村全体の三分の一にも到達していません。その上、策定主体は単独市町村が圧倒的です。また、都道府県が策定団体となっている例は僅かであり、地域の公共交通のネットワークを広域的に連携させたとは言い難い状況です。
 市町村においては規模の小さな団体ほど交通分野の人材が著しく少ないか皆無のため、特に都道府県の関与を求めることが重要であると思います。今後は、面的な広がりをつくり出せるよう、国が強力なリーダーシップを取って都道府県に働きかけるべきではないでしょうか。
 また、マスタープランの作成に当たっては、地方公共団体が地域のまちづくりと公共交通の確立を一体的に促進できるようになることも含めて、新たな担当部局の設置及び公共交通専任担当者の配置、育成のための支援を強化すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 さらに、地域の公共交通に関係する公共交通従事者の代表を地域公共交通の協議の場に加えることは不可欠と考えますが、政府の見解を伺います。
 今般、独占禁止法特例法案が国会に提出されており、カルテル規制の適用除外の創設の下、利用者の視点から地域公共交通利便増進事業が創設され、サービスの改善のための法改正がようやく一歩進んだように思えます。
 複数のバス会社がカルテルを結び、場合によっては事業者同士でいいとこ取りをするクリームスキミングを容認する場合もあるとのことですが、利用者の利便性を図ることと両立させるための制度的な担保はどのような仕組みとなっているのでしょうか。
 次に、政府が地域における輸送資源の総動員をうたっていることについてお尋ねします。
 地域における輸送資源とはどのようなものであるべきとお考えでしょうか。地域住民の移動手段として生活を支えてきた地域公共交通こそ、輸送資源の根幹に位置付けられるべきと思います。スクールバスや病院の送迎バスに頼らないで済むような交通政策が本来の姿であることから、引き続き、地域公共交通の根幹となるバス、タクシー、地域鉄道を支援していくことが基本にあるという理解でよろしいでしょうか。
 自家用有償旅客運送についてお尋ねします。
 今回の改正では、自家用有償旅客運送において、地域住民のみならず、観光客やその来訪者をことごとく運送の範囲に含むこととしております。さらに、交通事業者が協力して委託する仕組みも導入されますが、対価がタクシーの二分の一と低く、初期投資も安いことなどから、バスやタクシーの衰退に拍車を掛けるおそれはないのでしょうか。利用者の安全、安心を確保するため、利便性や効率性に偏重した安易な自家用車ライドシェアの導入を認めないことが明らかにされなければなりません。自家用有償旅客運送が無限に拡大されるものではないということをこの場で確認させていただきたいと思います。
 次に、新モビリティーサービスの創設についてお伺いいたします。
 MaaSは、モビリティー分野を超えて、圏域内の日常的なサービス、生活産業領域に拡大、深化していく可能性を有しています。特に、観光分野での貢献が期待できます。ユニバーサル社会の推進の観点からもMaaSに期待がなされています。もちろんMaaSを活用し、安心して安全に移動できることが前提となります。そのためにも、MaaSの初期投資や使用手数料に係る脆弱な地域交通機関への支援はもとより、移動の高付加価値化の在り方を検証するような事後チェックなどの的確な運用が求められていると思いますが、見解を伺います。
 また、地域公共交通を維持、充実させることは、観光振興等の地域経済活性化につながるのみならず、さらには、まちづくり、健康、福祉、教育、環境等の様々な分野でも行政経費を削減できるクロスセクター効果がもたらすことが知られています。これを踏まえ、地方公共団体が相互にかつ広域的に連携し、そこに多様な主体が関わって利用者利便を増進し、かつ、新技術を活用したMaaSなどの新しい地域公共交通の取組が促進されることが重要であると考えています。
 特に、その取組を促進させるためには、地域公共交通利便増進事業又は新モビリティーサービス事業がそれぞれ発行する共通乗車船券に係る運賃、料金の割引原資に対する財政支援処置の制度化を検討する必要があるのではないでしょうか。
 また、持続可能な公共交通の維持のためには、従来の支援策では限界が見られつつあります。地域公共交通維持確保改善事業に加え、地方公共団体が地域公共交通に対して更なる取組が推進できるよう、普通交付税の基準財政需要額に地域公共交通の運行や維持を目的とした財政需要を位置付けるなど、根本的かつ恒久的な財政支援が必要であると思いますが、いかがでしょうか。
 ところで、人口減少が進み、中長期的な需要が減少する中、二〇〇二年に実施されたバス、タクシーにおける需給調整規制の撤廃は、全体的にはこの業界の需要喚起につながらず、経営環境や労働条件を悪化させました。それどころか、関越道高速ツアーバス事故や軽井沢スキーバス事故を始めとする多くの事故を発生させ、利用者の生命すら危険にさらす事態に至ったのです。
 原因はまさにここにあるにもかかわらず、政府は、需給調整規制の再導入については、時計の針は戻せないなどとこれを聖域化し、競争政策の根幹的な見直しを直視しようとしてきませんでした。安全対策の強化を始めとしてその代わりとなる制度は次々と導入されましたが、地域公共交通の衰退に歯止めを掛けることはできなかったのです。これは既に政府も御認識のことと存じます。そして今回、ついに、本法案とともに、利用者利益の確保をうたい、乗り合いバスを対象とした独占禁止法の特例を設けるまでの事態に至っているのです。
 結局、需給調整規制の行き着いた先がカルテルの解禁という、競争政策としては極めて矛盾に満ちた対応であり、まさにマッチポンプであると断ぜざるを得ません。もはやその意味を失っている需給調整規制の撤廃が長年影響し続けてきた弊害の大きさに対して、政府は改めてしっかりと向き合い、需給調整規制の再導入に向けた議論をすべきではないでしょうか。
 世界的なコロナ感染拡大の危機をきっかけに、政府は、このような非常事態においても国民が雇用や所得に不安を抱えぬよう、地域公共交通などの社会基盤を強化し、恒常的に地域と国民生活を守りながらも成り立っていくような経済政策を、競争とは別の観点から早急に再検討すべきであります。
 鉄道、バス、タクシーを始めとした交通事業やトラックなどの物流事業は、国民生活の生命線を握る社会基盤産業であります。これらの事業者が感染症により倒産し、サービスが途絶しないよう、必要があればさきの補正予算に更に追加して、政府としても万全の対策を講じていただくことについて国交大臣に御決意をお聞きし、質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣赤羽一嘉君登壇、拍手〕

○国務大臣(赤羽一嘉君) 森屋隆議員にお答えをいたします。
 まず、検察庁法改正案をめぐる問題についてお尋ねがありました。
 今般の検察庁法改正を含む国家公務員法等の一部を改正する法律案に関する国会での取扱いにつきましては、国会において御判断いただくことであり、かつ、これらの改正案について私の所管外でございますことから、国土交通大臣としてお答えすることは差し控えさせていただきます。
 なお、本日から地域公共交通活性化再生法の審議をお願いするわけでございますが、この法案とは別に、コロナ対策につきましては、国土交通大臣として、建設的な御意見については与野党問わずこれを支援策にしっかり反映させていただく考えでありますので、何とぞ御指導をよろしくお願いを申し上げます。
 次に、地域公共交通に関する施策の重要性についてお尋ねがございました。
 人口減少の本格化に伴う需要の縮小等により、公共交通サービスの維持確保が難しい状況となっておりますが、そうした中においても国民の皆様の日々の足を守ることが我が国の交通政策における重要な課題と認識をしております。そのため、本法案の新たな制度を活用しながら、地域公共交通に関する施策にしっかり取り組んでまいります。
 バス事業者等の自動車運転労働者の長時間労働の是正と賃金上昇についてお尋ねがございました。
 国土交通省といたしましては、地域の生活の足である乗り合いバスの担い手を将来になって確保していくためには、長時間労働の是正と賃金上昇によってバス運転手の待遇の改善を図ることが不可欠であり、労働生産性を向上させていく必要があると考えております。
 そのため、本法案及び独占禁止法特例法案に基づき、同一地域で複数の事業者が行う共同運行を促すほか、連節バス等の輸送力の高い車両を導入するなどの取組を支援することで労働生産性の向上を促してまいります。
 地域公共交通計画の作成における都道府県の関与についてお尋ねがございました。
 計画の策定主体につきましては、地域の移動ニーズにきめ細やかに対応できる市町村を基本的に想定をしておりますが、本改正案においては、複数の市町村が都道府県に対し、計画を共同で作成するよう要請することができる新たな制度を盛り込んだところでございます。
 地方公共団体の公共交通担当部局の新設等への支援についてお尋ねがございました。
 市町村の約八割では公共交通の専任担当者が不在であるとの調査結果も出ていることから、人的支援は重要であると考えております。
 このため、国土交通省では、地域公共交通計画作成のガイドラインの充実や、市町村職員等に対する地域公共交通に関する具体的な政策や取組事例の研修などにより、地方公共団体のノウハウ面や体制強化の支援の充実を図ってまいります。
 公共交通従事者が地域公共交通に係る協議の場へ参加することについてお尋ねがございました。
 現行の地域公共交通活性化再生法におきまして、地域の協議会には、サービスの現場を熟知しているなどの理由から、地方公共団体が必要と認めた公共交通従事者も参加できる制度となっており、改正後もこの制度は変わらずに維持されることになっております。
 次に、複数のバス会社間の公平な競争と利用者の利便性を両立させるための制度的な担保についてお尋ねがございました。
 今般の独占禁止法特例法案の目的は、複数のバス事業者間の等間隔運行などの共同経営を特例的に認め、将来にわたりバスを中心とする地域公共交通のサービスの維持を図ることにあります。これがいわゆるいいとこ取りにならないよう、計画の認可に際しましては、区域内においてサービスの維持を図ることや、利用者に不当な不利益とならないことを確認するとともに、こうした条件に適合しなくなった場合には適合命令等により担保することとしております。
 地域における輸送資源のあるべき姿についてお尋ねがございました。
 国土交通省におきましては、地域の公共交通の維持確保を図っていく上では、まずはバス、タクシー等の公共交通機関について労働力の確保とサービスの維持改善を図り、移動ニーズに対応することが最も重要だと考えております。
 しかしながら、過疎地など公共交通サービスだけでは移動ニーズに十分対応できない地域においては、自家用有償旅客運送やスクールバス車両等の地域の輸送資源を総動員することが必要であると考えております。
 自家用有償旅客運送制度の改正による運送事業への影響並びにライドシェア導入についてお尋ねがございました。
 自家用有償旅客運送は、地域における必要な輸送について、バス、タクシー事業者によることが困難である場合に、市町村等が運送責任を担い、自家用車を用いて有償で運送できることとする制度であり、本法案においてもこの要件は維持することとしております。
 なお、いわゆるライドシェアは、自家用有償旅客運送とは異なり、運行管理等について責任を負う主体を置かないままに、自家用車のドライバーのみが運送責任を負う形態を前提としており、安全の確保等の問題があるため認めるわけにはいかないと考えており、この考えは従来から変わっておりません。
 MaaSの導入に際し、付加価値を高めていくための取組についてお尋ねがございました。
 MaaSの普及に当たりましては、公共交通サービスにとどまらず、観光や生活関連サービスを連携させることで、高齢者や障害をお持ちの方々、外国人旅行者を含めた幅広い利用者に対して利便性の高いサービスを提供することが重要な課題であると考えております。
 このため、国土交通省では、現在進めていますMaaSの実証実験についてこうした観点からも評価を行い、優れた取組につきましては横展開を行ってまいります。
 共通乗車船券に係る割引に対する財政支援措置の制度化についてお尋ねがございました。
 本法案では、地域公共交通利便増進事業及び新モビリティーサービス事業において、計画に基づいて、交通モードをまたぐ場合も含め、複数の交通事業者が定額制乗り放題運賃等の設定を行う場合には、運賃等の設定に係る手続をワンストップ化する特例を設けております。
 これらの事業に係る実証実験において初期投資の経費に補助を行っているところでありますが、実用化後の運賃の設定につきましては、各交通事業者の自主的な判断により行われるべきものと考えております。
 持続可能な地域公共交通を維持するための財政支援についてお尋ねがございました。
 国土交通省においては、地域における必要不可欠な移動手段を維持確保するため、過疎地域等における幹線バスやコミュニティーバスの運行の欠損等に対し国費による補助を行っており、あわせて、これに係る地方公共団体の負担に対しては地方交付税措置が講じられているところです。今後とも、地域の御要望や御提案を伺いながら、必要な予算の確保に最大限努めてまいります。
 需給調整規制の再導入の可能性についてお尋ねがございました。
 乗り合いバスや鉄道などにつきましては、平成十二年以降、いわゆる需給調整規制が廃止をされ、サービスの供給量やその水準は原則として交通事業者の経営判断により決められるようになっており、これによりまして利用者にとっての利便性の向上が図られてきたところであります。本法案において、このような基本的な考え方については変更はございません。
 一方で、特に地方部では人口減少の本格化に伴う需要の縮小や運転者不足の深刻化などにより、採算性の安定的な確保等が難しくなっているため、地域住民のニーズを熟知している地方公共団体が中心となって交通サービスを確保するための制度の充実を進めてきたところであり、これにより地域公共交通の維持改善を進めてまいります。
 交通事業や物流事業に対する新型コロナウイルス関係の追加対策についてお尋ねがございました。
 公共交通や物流につきましては、政府の基本的対処方針に基づきまして必要な機能を維持することが求められており、現場では感染のリスクや不安の中で業務に献身的に御尽力いただいております事業者やその従事者の皆様に改めて心から感謝を申し上げる次第でございます。
 一方で、外出自粛等により輸送需要が減少するなど、極めて厳しい経営環境に置かれていることから、社会にとってなくてはならない重要なインフラとして、これまで随時拡充されてきた政府の各種支援策を最大限に活用しながら、事業の継続と雇用の維持に全力で取り組んでまいります。
 以上でございます。(拍手)
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