議事録

厚生労働委員会 2022年5月12日

208-参-厚生労働委員会-013号 2022年05月12日

○森屋隆君 おはようございます。立憲民主・社民の森屋隆でございます。よろしくお願いをいたします。
 まず、法案の審議に入る前に、四月の二十八日、本委員会で我が党の川田理事も取り上げられました欧米を中心に子供さんが重い急性肝炎を発病している事案についてお伺いしたいと思います。
 この肝炎は、五月八日までの報道では、昨年十月以降、日本においても可能性のあるケースが計七名確認されていると、こういうふうに承知をしています。この小児肝炎について、諸外国及び国内の発生状況、さらに、死亡及び重症化の状況、患者の年齢層、原因等について、本日までに判明していることについて御説明いただきたいと思いますし、あわせて、疾患に関する情報を分かりやすく私は随時発信する必要がこれあると思っております。厚生労働省の御所見を伺いたいと思います。

○政府参考人(佐原康之君) お答えいたします。
 子供の原因不明の急性肝炎につきましては、欧州疾病予防管理センターが最も新しい国別の報告をまとめております。それによりますと、本年五月五日時点で、二十五か国で少なくとも三百例の報告があったとされております。
 本年五月三日時点における英国からの報告では、年齢の中央値は三歳、性別は五〇%が女性で、検査が行われた百二十六例中九十一例でアデノウイルスが検出されましたけれども、現時点では、アデノウイルスが原因で肝炎を発症したかどうかも含め、原因については不明であるというふうにされております。
 我が国におきましても、四月二十日に厚生労働省から自治体や医療機関に対して注意喚起を行うとともに、WHOの定義に基づき、昨年十月一日以降の子供の原因不明の急性肝炎の入院例について報告を求めております。その上で、報告のあった事例を毎週取りまとめて公表するとともに、国立感染症研究所による分析結果を去る五月十日に公開をしております。
 国立感染症研究所の分析結果によりますと、昨年十月一日から本年五月五日までの期間における日本国内の入院症例七例につきましては、三例は男性、四例は女性、年齢の中央値は八歳、死亡例や肝移植に至った事例はなく、五例が既に退院、アデノウイルスのPCR検査の結果が陽性であった事例は一例、新型コロナウイルス、コロナのPCR検査の結果が陽性であった事例は一例でありました。また、現時点では、子供の重症肝炎が増えている兆候はないと分析をされております。
 また、情報発信の件でございますが、国立感染症研究所のホームページにおきましては一般の方向けのQアンドAも作成して公開したところでございます。
 引き続き、諸外国の感染状況を注視するとともに、情報収集と分析を行い、個人情報の保護にも留意しつつ、必要な情報の発信に努めてまいりたいと考えております。

○森屋隆君 ありがとうございます。オミクロン株の関係もあるんじゃないかということもちょっと言われているかと思います。引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、法案に関する質問に入ります。
 昨年十一月から、厚生労働省の医薬品医療機器制度部会は、僅か三回の開催によってこの緊急時の薬事承認制度をつくるという、こういった取りまとめをされました。
 しかし、その部会においても複数の委員から、安全性の確保、この担保をどのように図っていくのかといった、そういった懸念も示されていることも承知しております。
 例えば、十日の厚生労働委員会に参考人として出席された隈本邦彦参考人は、安全性が確認されるというならば、なぜ現状、第三相の試験、この安全のチェックをしているのか、第三相で見付けられる副作用というものも当然あるはずであると。そして、第三相なしで認めるということであれば、その分市販後のチェックを厳しくしないとこのバランスが取れないと、こういうふうに発言をされました。また、花井十伍参考人からも、安全対策については原則として全数登録をすべきとの発言がありました。
 さらに、これまでの委員会の質疑でも多くの委員から懸念が示されているこの安全性について、改めて、緊急時であってもこの安全性はしっかりと担保がされるということについて確認するとともに、安全性の担保をどのように図っていくのか、これ具体的に御説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(鎌田光明君) 医薬品の承認審査におきましては、その安全性につきまして、非臨床試験や臨床試験を通じて確認された毒性、副作用等が効能、効果に比して著しく有害でないかどうかを評価し、そして確認するというものでございます。
 したがいまして、緊急制度におきましても、このようなベネフィットとリスクのバランスを考慮しながら許容可能な安全性を担保するという意味におきまして、通常の薬事承認と同等の水準での安全性の確認というのを要件にしているところでございます。
 具体的には、非臨床試験あるいは後期第二相試験までで確認されている副作用リスクにつきましては、推定される有効性を踏まえつつ、PMDAにおきまして審査し、そのことを踏まえて薬事・食品衛生審議会に御審議いただくというものでございます。
 また、全数調査という御指摘があったという御指摘ございましたが、我々としても、その薬品の特性に応じて、医薬品リスク管理計画、いわゆるRMPでございますけれども、このRMPを策定するなどを通じて市販後の安全対策を充実し、安全性確保に努めることとしておりまして、具体的には医療機関、製薬企業からの市販後の情報収集などを引き続き行っていくということを考えているところでございます。

○森屋隆君 ありがとうございます。
 次に、先日の委員会の答弁なんですけれども、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病とは新型インフルエンザ等の疾病を想定していると、こういった答弁がありました。
 感染症法にある一類、二類等のこの類型など、適用に際しての具体的な疾病の基準というのはあるんでしょうか。また、今後、仮に新型コロナウイルス感染症が五類感染症に移行したとしてもこの緊急承認制度が適用される疾病に当てはまるのか、季節性インフルエンザ等の他の五類感染症の流行時であってもそういった疾病に当てはまり得るのか、お伺いしたいと思います。

○政府参考人(鎌田光明君) 緊急承認制度の適用対象となる緊急に使用されることが必要な医薬品は政令で定めることとしておりまして、政府全体でそれを判断し、対応するということになってございます。
 その政令の指定に当たっては、御指摘のあった感染症法上の指定と直接連動する制度ではございませんが、一方で、緊急事態の宣言の発出ですとか、今お話のあった感染症の流行状況といった個別具体の状況を総合的に判断して、政府全体として判断していくというものでございます。

○森屋隆君 緊急時の定義について、次は伺いたいと思います。
 緊急時の定義については、既に多くの先生方から質問がされていますけれども、そもそも疾病の蔓延拡大防止するための緊急に使用されることが必要なときですよね。このときとはということなんですけれども、次のこの感染拡大を防止する観点から考えると、昨年の十月の頃というのは、新型コロナウイルス感染症の感染者数がかなりこれ減少したと私は承知しているんですけれども、このようなときも含まれるという理解でよろしいんでしょうか。そして、そうであるのならば、この緊急時というのは当分続くんだろうなと私は思っています。その終わりはどのように判断されるのかについてもお伺いしたいと思います。

○政府参考人(鎌田光明君) まず、一般論について、先ほどの答弁と繰り返しになって恐縮でございますが、政府全体として、必要性ですとか蔓延状況などを鑑みて、その緊急時が終わった否かとか、そういったことを個別具体の状況の上で判断していくということとなります。
 それで、御指摘のあった昨年十月の件でございますけど、確かに一旦その感染が下降傾向になったということは言われるかもしれませんが、その時期であっても、感染者の再拡大や新たな変異株の出現等に注意を要する状況と言われてございまして、また、感染拡大に対する社会の耐性を高めていくといった観点もございましたので、引き続き、そうした観点からは引き続き経口治療薬など新たな治療薬の選択肢が必要となるという、されていた状況であったと理解しておりまして、医薬品を緊急に使用する必要性があったものと考えているところでございます。

○森屋隆君 ありがとうございます。その都度判断していくということですね。ありがとうございます。
 次に、本法案では、薬機法の第八十三条において、これもこの間質問あったかと思いますけれども、動物のために使用されることが目的とされる医薬品等について、人のための医薬品等に準じた改正が行われると、こういうふうに聞いています。条文では、当該医薬品が有する対象動物について、残留性の程度から見て、その使用に係る対象動物の肉、乳その他食用に供される生産物で人の健康を損なうものが生産されるおそれがあることというふうになっていると思います。
 人間が食する可能性がある動物以外、例えばペット等に対する医薬品もこの対象になるんでしょうか。また、対象となる疾病は、動物から人間には感染しない病気、動物だけが感染する病気もこの対象になるのか、併せてお聞きしたいと思います。

○政府参考人(熊谷法夫君) お答えいたします。
 動物用医薬品については、薬機法第八十三条第一項の規定により、人用の医薬品に関する規定を読み替えて適用されており、今回の改正案においても緊急承認制度の対象としております。
 具体的には、ペット用か家畜用か、また対象とする疾病が動物から人間に感染するおそれがあるかどうかを問わず、動物の生産又は健康の維持に重大な影響を与えるおそれのある疾病の蔓延、その他の健康被害の拡大時には動物用医薬品も緊急承認制度の適用が可能となります。
 法案の成立をいただきましたら、動物分野においても緊急承認制度を適切に運用してまいりたいと考えております。

○森屋隆君 ありがとうございます。
 次の質問なんですけれども、本当に専門家の先生が多い中で素朴な質問で恐縮なんですけれども、臨床試験と治験について伺いたいと思います。
 厚労省のホームページのQアンドAでは、新型コロナワクチンは医療品開発に必要な臨床試験、括弧、治験のプロセスを経て世界中で承認されていますと、こういうふうに書いてあるんですが、ここでは臨床試験の後ろに括弧書きで治験というふうに書いてあります。両者が同一のものであるかのように記載されているんですけれども、しかし、国立がん研究センターのホームページなどを見ると、臨床試験は新しい治療法の安全性や有効性を確認するための試験のことを指しまして、臨床試験のうち新しい医薬品や医療機器の製造販売の承認を国から得るために行う試験のことを特に治験というと。まあ厳密には違う概念のように思われるんですけれども。
 そこで、臨床試験とこの治験の違い、その関係性について、それぞれ目的等に触れながら説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(鎌田光明君) まず、臨床試験でございますが、臨床試験につきましては、法令上の定義はございませんが、一般に、医薬品や医療機器、医療技術につきまして、人での有効性や安全性を調べるため、人を対象として実施される試験のことを臨床試験というものと承知しております。
 他方、治験でございますが、治験は薬機法上の言葉でございますけど、これは、今申し上げた臨床試験のうち、承認申請に添付すべき資料を目的とするために行われる試験を治験としているというところでございます。

○森屋隆君 ありがとうございます。
 本当に素朴な質問ですけど、なかなか難しい、同じようなことにも何か感じるようなところもありますし、今先生方からも少し笑いがあったんですけど、まあそういうことなのかなと、そういうふうに思います。
 次に、治験のことについて少しお伺いしたいと思います。例えば、がん患者の方や難病患者の方に対する治験について伺いたいと思います。
 手術などによる根治が困難な患者の方を、治療法が確立されていない難病患者の方に対する新薬の治験、これまでの薬と比べて当然良い効能を持っていることが期待されて、その薬の承認前から治療を受けられるというのは希望の光と、こうなるんだと、こういうふうに思うんですが、当然、一方で、まだ有効性や安全性が確立されていない薬を患者さんに対して用いるため、予期せぬ悪影響が生じる可能性も当然これはあるんだと思います。
 そのため、被験者の人権と安全に十分配慮して実施しなければならないと思っているんですけれども、そこで伺いたいのは、例えば、がん患者の方へ治験の実施についてそれが事実上強制されているような場合はないのかということなんです。医師から治療のためにはこれしかないよと、あるいはこちらの新薬の方が効くはずだと、こういったように言われますと、患者さんというのは断ることが大変困難だと私も思いますし、当然、このような事態を防ぐために、その被験者には事前に十分な説明等が行われるということも承知をしています。
 具体的にはどのような説明等が行われるのか、また、治験に当たってのその説明に関してはどのようなルールが定められているのでしょうか。これ確認でございます。

○政府参考人(鎌田光明君) 治験につきましては、先ほど申し上げましたように、薬事の承認申請に添付する資料の収集を目的とする試験を位置付けておりますので、薬機法、薬事の体系におきまして御指摘のあったような人権保護などのルールも定めておりまして、具体的には、薬機法の第八十条の二に基づきまして、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令、いわゆるGCP省令と申しますが、それを遵守するということになっておりまして、そこにおきましては、治験の科学的な質、成績の信頼性の確保、承認申請に必要でございますが、それを定めておりますが、それに加えまして、被験者の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上に対する配慮というものを明記しておりまして、治験への参加が強制されるような事態があってはならないという考え方を示しているところでございます。
 具体的には、当該GCP省令におきまして、患者等、患者への説明などにつきましては、治験の責任者の医師が被験者となるべき者に治験に参加させるときは、あらかじめ治験の内容その他の治験に関する事項について、その当該者、つまり被験者、患者の理解を得るように文書により適切な説明を行い、文書により同意を得なければならないとしておりますし、被験者への説明を行わなければならない事項としては、治験の参加をいつでもやめることができること、あるいは治験に参加しないこと、治験をやめることにより不利益な取扱いを受けないことを含めなければならないとしております。
 したがいまして、治験への参加は被験者の自由意思による同意を得る必要があるというふうに考えております。

○森屋隆君 ありがとうございます。
 当然、丁寧な説明と文書を交わす、さらには途中でやめてもいいということかと思います。本当、確認いたしました。ありがとうございます。
 次の質問に移りたいと思います。
 被験者には、治療によって、当然、先ほどもありました薬の副作用等により健康被害が生じることも想定されます。そのため、今説明ありましたGCP省令で、治験の依頼をしようとする者は、あらかじめ、治験に係る治験者に生じた健康被害の補償のための保険契約の締結その他必要な措置が講じられておかなければならないと、こういうふうにあると思いますけれども、これについて二点伺いたいと思います。
 まず、副作用の、これも前回の委員会でもいろいろ討論になったのかと思いますけれども、因果関係の立証などについて、補償を受けるためのこの立証が被験者側に求められるとすれば、これは大変な負担でありますし、なかなか難しいと思います。この点について、被験者に対しての補償が求められているのでしょうか。
 また、この健康被害の補償の水準についてなんですけれども、例えば、健康な人を対象とする治験と、先ほど言った患者さんを対象とする治験では一般的に補償額等について差が設けられているのでしょうか。厚生労働省として定められている基準やガイドラインがもしあるんであれば説明いただきたいと思います。

○政府参考人(鎌田光明君) 御指摘、あっ、御紹介いただきましたように、先ほど申し上げましたGCP省令におきましては、あらかじめ、治験に係る被験者に生じた健康被害の補償のために保険契約の締結その他の必要な措置を講じておかねばならないとしております。
 それを踏まえまして、私どもの方でこのGCP省令の運用に関するガイダンスというものを通知において定めておいて、それを業界等に周知しておりますが、その中におきまして、因果関係の証明などについて被験者に負担を課すことがないようにということを、することと明記しているところでございます。
 また一方、その補償の水準でございますけれども、補償については、その治験の内容ですとか合意内容について様々異なるので、我々そのGCP省令の体系では定めておりませんが、一方、その製薬企業、治験を実施する製薬企業から構成される医薬品企業法務研究会という法務担当者から構成される研究会がございますが、そこでガイドラインというものを定めております。
 そこにおきましては、因果関係の判断は治験依頼者の責任において行うことと再度明記するとともに、補償金の水準につきましては、健康な人を対象とした治験では患者を対象とした治験に比べて補償金の目安は高めに設定しているというところでございますので、このことを踏まえて、各企業は治験実施に当たって実際に参考とされているものと理解しております。

○森屋隆君 丁寧にありがとうございます。
 次の質問は大臣に伺いたいと思います。
 衆議院では、本法案の審査と並行して立憲民主党が提出した議員立法三案も審査されました。この中には特定医療品特措法案という法案も入っているんですが、この疾病の治療に関して優れた使用価値を有する医薬品については、特に緊急時の医療上の必要を認められた場合、学会等の意見を参考にしながら、当該医薬品を優先かつ迅速に承認する制度を創設すると、国が医療品等の研究開発の推進から生産体制の整備までをサポートしていくと、治療薬を迅速に確保していくと、こういった趣旨の法案だったと思いますけれども、この立憲民主党提出の三案は残念ながらこれ否決されましたけれども、製薬企業に任せるだけではなくて、国が主体的にこの治療薬を確保する姿勢を示していくということは私は非常に重要なのかなと、こういうふうに感じています。
 この点について、後藤厚生労働大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(後藤茂之君) 医薬品の製造販売につきましては、承認申請に必要な治験の実施とデータの解析、承認後の副作用情報の収集、解析、医療現場への情報提供などの安全対策を含めまして、製薬企業が責任を持って対応する必要があることから、製薬企業からの申請に基づいて承認をしております。
 今般の新型コロナへの対応においては、これまでも国やPMDAにおきまして企業からの各種相談に最優先で対応しておりまして、緊急承認制度においても同様に企業からの相談に積極的に対応してまいりたいというふうに考えておりまして、その辺りの意思疎通を図る必要は十分に認識をいたしております。
 また、新型コロナ対応として行った治験等の手続の簡素化や企業相談の実施のほか、緊急承認制度によりまして申請に必要な臨床試験データが軽減されることで、申請時の企業負担が軽減されて、日本での承認申請が促進されるものというふうに考えております。

○森屋隆君 大臣、ありがとうございます。
 次に、三月二十二日、先進的研究開発戦略センター、通称SCARDAが我が国のワクチン開発の司令塔として設置がされました。そこで、SCARDAに期待されることについて二点伺いたいと思います。
 まず、このSCARDAの設置によって新型コロナ対策に関して何か変化があるのか、そして我が国の新型コロナウイルスワクチン開発にどのような効果があるのかをお示しいただきたいと思いますし、また、コロナ禍の収束後においてもこのSCARDAが我が国のワクチン開発等で果たす役割について、これまでの体制との違いも含めて御説明をいただきたいと思います。

○国務大臣(後藤茂之君) 今委員から御指摘のとおり、AMEDにSCARDAが、昨年六月にワクチン開発・生産体制強化戦略というのが決まりましたが、それに基づいて設立をされました。感染症有事の際にワクチンを国内で開発、生産できる体制を確立しておくことは、国民の命を守るための安全保障上も極めて重要なことでございますし、これは、平時からワクチン開発を主導するSCARDAがワクチン開発体制の強化に果たす役割、これが大きいということだと考えております。
 厚生労働省としては、SCARDAで開発支援したワクチンが迅速に実用化できるように、例えば、アジア地域の臨床研究・治験ネットワークの充実や薬事承認プロセスの迅速化等、必要な環境整備や支援を行ってまいりたいと考えております。また、厚生労働省の医務技監や国立感染症研究所の所長はSCARDAの開発戦略に関する会議の構成員でもありまして、政府一体となってワクチン開発を平時よりしっかりと推進してまいりたいと考えております。

○森屋隆君 大臣、ありがとうございました。
 次の質問も、そういった今大臣が答弁いただいたことも含めて聞こうと思ったんですけれども、大臣、丁寧にお答えいただいたと思っていますんで、次の質問は一つ飛ばしたいと思います。
 それでは、現在、このSCARDAでは二つの事業について公募を行っていると承知をしているんですけれども、また、もう既にこの公募に対しても説明会も終わっている、これについても承知をしています。特に、このワクチン・新規モダリティ研究開発事業では一件の開発費が最大で三十億円と聞いています。次のパンデミックを見据えたコロナウイルス感染症の対象に公募を行っていますが、なかなかこの額も大きなものであり、この事業の採択には様々な角度から検討するべきだと、こう当然思っています。真に有益なものになるものを採択していただきたいと思います。
 そこで、採択についてどのような基準で行われているのか、これについて、答えられる範囲で構いませんのでお答えいただきたいと思います。

○政府参考人(長野裕子君) お答えいたします。
 委員の御指摘のSCARDAで実施しておりますワクチン・新規モダリティ研究開発事業の公募につきましては、重点感染症などを対象とするワクチン開発とともに、ワクチン開発に資する新規のモダリティーの研究開発について広く研究提案を募っているところでございます。
 研究テーマの審査基準としましては、公募要領上において、科学的、技術的な意義及び優位性などに加えて、感染症有事における迅速な開発、生産が期待できること、また感染症に対する有効性及び安全性などのエビデンスが十分であるかなどを示しておって、こうした基準に基づいて採択の適否を専門家の意見なども踏まえながら判断するということとしてございます。

○森屋隆君 ありがとうございます。
 四月の二十七日に開催された政府の規制改革推進会議において、この製品の市販解禁などが審査がなかなか進まないと、このことについて規制改革推進会議が調査の必要性を指摘しているんですけれども、これに対して、大臣、受け止め、もしありましたらお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(後藤茂之君) 今委員御指摘の本年四月二十七日の規制改革会議におきまして、既に薬事承認申請されて審査が長期化しているスイッチOTCの品目について、承認審査の経緯の調査を実施する必要があるとの意見が出ましたことは承知をいたしております。
 既に申請された品目で審査が長期化しているものの多くは、PMDAから申請者に対しスイッチOTC化における課題について説明を求めておりますが、申請者から回答が示されず、その結果、審査が長期化しているものでございます。
 このため、スイッチOTC化の更なる推進に資するように、医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議におきまして、令和三年二月にスイッチOTC化に際しての課題、論点等を整理した中間とりまとめを行ったところでございます。これらの課題、論点等は、既に申請され審査が長期化している品目についてスイッチOTC化に際してPMDAが指摘した課題、論点等とおおむね一致をしているところでございます。
 今後とも、スイッチOTCの承認審査においては、こうした中間とりまとめで整理された課題、論点等を踏まえて、OTCとしての有効性、安全性等を適切に確認してまいりたいと思っております。

○森屋隆君 大臣、ありがとうございます。
 次に、電子処方箋に関しまして、最後の質問になりますけれども、三点ほどお聞かせいただきたいと思います。
 まず、電子処方箋の導入意義の一つとして、重複投薬や併用禁忌が回避できると、こういうふうに御説明がされていると思いますけれども、そこで現状、重複投薬や残薬等はどの程度あって、電子処方箋の導入によってそれがどれぐらい削減できるのか、また、その効果によって医療費がどれだけ削減できるのかといった試算あるいは数値目標というのはあるのか、これを示していただきたいと思いますし、また、他の医療品の処方状況等が確認できることから、当然、医師は処方内容の調整だったりとか、薬剤師さんは疑義照会等によって重複投薬をチェックしていく役割がこれまで以上に求められると思いますけれども、このことからも、そのような指導等を行った場合には、診療報酬上しっかりと評価がなされるという理解でよろしいのか、併せて伺いたいと思います。

○政府参考人(鎌田光明君) 御指摘のとおり、電子処方箋の導入によりまして、過去の処方、調剤情報の閲覧、そして重複投薬等のチェックの結果の表示が可能となりますので、重複投薬等の抑制ができるようになるというところでございまして、これはまずは患者さんにとっての効果的な薬物治療、良い医療を受けるということを目的とするところでございます。
 御指摘の、現時点、どの程度重複投薬などがなされているか把握しているかでございますが、まず、具体的に把握しておりません。申し訳ございませんが、電子処方箋により又は電子処方箋の導入により、どの程度重複投薬が抑制され、どの程度医療費が削減されるかということも併せてお示しすることができないというところでございます。ただ、重複投薬等が抑制されれば、当然結果として医療費が抑制されるという考えは持っております。
 なお、御指摘の電子処方箋に係る診療報酬上の評価というものでございますが、現時点では存在しませんが、今後、必要に応じ中医協において議論されるものと考えておるところでございます。

○森屋隆君 ありがとうございます。
 そういった、どのぐらい残っているのか、あるいは、そういったことは把握していないけれども、これはうまくいけば、結果として医療費の削減になるということですかね。ありがとうございます。そして、診療報酬についてもこれからしっかり議論をしていくということでよろしいでしょうかね。ありがとうございます。
 次に、電子処方箋について、今回の法改正で初めて運用が解禁されるわけでは当然ありませんし、また、その対応も義務ではないということで、電子処方箋の対応、できないというか、しないというかですね、薬局等が一定程度私は残る、これは当然そういうふうに考えているんですけれども、その中で、本当に、当面の間、処方箋を印字した紙を渡すというこの運用を変更して完全に電子化することというのは、これ可能なんでしょうか。

○政府参考人(鎌田光明君) まず、電子処方箋でございますが、先ほど御指摘いただいたような重複投薬なども含めまして、さらにはより良い薬物治療ができるという意味におきまして、患者さん、そして医療機関、薬局にメリットがあり、当然、できるだけ多くの医療機関や薬局に導入いただくということが重要という、こういうふうに考えております。
 そのために、厚生労働省といたしましては、令和三年度の補正予算において九・三億円を計上いたしまして、こうしたメリットなどについての周知、広報をいたしますし、また、今年の秋頃からモデル事業というものを実施して、更に具体的にそのメリットなどを理解していただく、あるいは導入に際しての課題を解決していくということを考えてございます。
 さらに、導入時の負担の軽減という観点から、医療情報化支援基金三百八十三億円を活用いたしまして、医療機関などへのシステム導入の支援ということで、できるだけ多くの医療機関などに導入していただくための推進策を強力に進めていくということを考えているところでございます。
 あわせて、医療機関や薬局の導入を進める観点から、重複投薬等のチェック時間を可能な限り短縮する、電子カルテ未導入の医療機関であってもレセプトコンピューターで電子処方箋の利用を可能とする、薬局におきましては電子処方箋の内容を自動的に取り込んでデータの入力の手間を省くといった、医療現場に寄り添ったシステム設計をすることによって、より広げるという環境整備をしているところでございます。
 いずれにいたしましても、今後、その電子処方箋のメリットというものを十分に理解していただくことによってこの普及を進めていくこととしております。

○森屋隆君 ありがとうございます。
 最後の質問になります。
 電子処方箋に関して、新設される地域医療介護総合確保促進法第十二条の二第二項にあるこの支払基金等による処方箋情報の電磁的提供に係る規定では、処方箋に記録された情報を閲覧できるのは当該患者のみとなっていると思います。しかし、これまでの処方箋に関する規定では、現にその看護に当たっている人も処方箋の交付を受けられたと承知をしているんですけれども、つまり、これまででは、その患者さんが看護に当たっている者もこの処方箋の内容を閲覧し把握することができたのではないかなと、こういうふうに思います。
 新しい規定では、この閲覧ができなくなってしまったことによって看護に支障が生じるおそれがあるのではないかと、このように懸念をしていますけれども、この点について厚労省の見解を伺いたいと思います。

○政府参考人(鎌田光明君) 今ここで御審議いただいております薬機法の改正案におきましては、御指摘のとおり、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律の第十二条の二におきまして、支払基金等に対しまして、患者が電磁的により当該処方箋に記載された情報を閲覧できるようにすることを義務付けております。
 そうしますと、この規定に基づきまして、患者は、患者さんはマイナポータルを通じて処方内容を閲覧することができますが、まさにその内容を親権者や介護者に、条文上明記することをせずともに、スマートフォン等のデバイスを閲覧させることできますし、また、患者本人がマイナンバーカードの代理人設定を行い、代理人がマイナポータルで患者の処方内容を確認することも可能でありまして、支障は生じないというふうに考えているところでもございます。

○森屋隆君 ありがとうございます。
 なかなか複雑なのかなと思いますけれども、介護する人もその情報を知ることができるということで確認をいたしました。
 私の質問は以上でございます。終わります。ありがとうございました。

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