議事録
国土交通委員会 2024年5月21日
2024.05.21
- ○森屋隆君 立憲民主・社民の森屋隆でございます。よろしくお願いをいたします。 今、永井先生からもありました、世界と比較してということで、国内緑地について説明があったと思います。それを踏まえてなんですけれども、であれば、これまでの取組の総括と都市におけるこの緑の現状について、認識をまずは伺いたいと思います。
- ○政府参考人(天河宏文君) 昭和四十八年に都市緑地保全法を制定いたしまして、特に住民に最も身近な市町村が主体となる緑地の保全あるいは緑化の推進の制度の充実を図ってきております。 その代表的な制度といたしましては、今回改正をさせていただきたいと考えております土地利用規制による確実な緑地化、保全を可能とする特別緑地保全地区、あるいは市町村が策定する緑地の保全及び緑化の推進に関する基本計画、こうしたものが挙げられると思っております。 こうした各種制度を展開してきたわけでございますが、市町村等による財政制約もあり、また、その緑地の確保の取組は一般的に収益につながらないということもございまして、緑地の住宅用地等への転用が進んだ結果、緑地の充実度が低く、また減少傾向が続いておるというふうに認識をしております。 緑地の質、量両面での更なる充実を図っていくと、こうしたことが必要であると考えております。 以上でございます。
- ○森屋隆君 ありがとうございます。 課題はあるということだと思いますけれども、今回の法案ですけれども、そういった諸課題がある中では、先ほどもありましたけど、三億円という予算で、私は少し少ないんだろうと思いますし、その法案に対する仕掛けというか取組の内容も、あるいは実効性についても少し疑問を感じています。 法案の背景、必要性と、であれば、その法案の内容がどういうふうにリンクしているか、ここをもう少し説明をいただきたいと思います。
- ○政府参考人(天河宏文君) お答えいたします。 これまで都市緑地の確保に当たりましては、自治体においては財政制約あるいはノウハウが不足している、民間事業者におきましては収益を生み出しづらいということで、限定的という課題がございました。国としましても、これまでの緑地確保による各種の制度の創設や支援措置を行ってきたものを、国自身の基本的な考えや目標を明確に示すという点では改善の余地があったのではないかと考えております。 その一方で、近年、気候変動対策や生物多様性の確保、ウエルビーイングの向上などの課題解決に向けまして緑地の持つ機能への期待が高まっているほか、ESG投資などの世界的な広がりにより、市場の中で緑地確保に向けて民間投資を推進する機運も拡大してきております。 このような社会経済情勢の変化を踏まえまして、緑地に係る課題に対応するため、本法案におきましては、国主導による戦略的な都市緑地の確保に向けた基本方針の策定、貴重な都市緑地の積極的な保全、更新のための自治体向けの支援、民間事業者等による緑地確保の取組を国が認定支援する仕組みの創設、こうした措置を講ずることといたしております。 さらに、本法案の措置に併せまして予算、税制においても所要の措置を講ずることによりまして、緑地に係る課題の解消に向けた実効性を高め、都市における質、量両面での緑地の確保等を一層進め、良好な都市環境の形成を図っていきたいと、このように考えております。 以上でございます。
- ○森屋隆君 次に、アメリカや諸外国で見られるグリーンインフラの推進の必要性について聞きたいと思うんですけれども、このグリーンインフラを町づくり等に取り入れることで防災・減災等のインフラとしての機能を発揮すると、こういうふうに言われています。令和三年の改正流域治水関連法でもその考え方は注目されました。 今回の法案では、このグリーンインフラとの関係性、直接的には見受けられないと思っているんですけれども、法案にはその趣旨が反映されているのかどうか、また、今後導入に向けた必要性、加速させる必要がないのか、この点についてお聞きしたいと思います。
- ○政府参考人(天河宏文君) お答えいたします。 委員御指摘のグリーンインフラは、自然環境が有する多様な機能を活用して持続可能で魅力ある地域づくりを進める取組でございまして、国土交通省としてもその推進を図っているところでございます。 本法案は、緑地が有する多様な機能を活用し、気候変動対策、生物多様性の確保、ウエルビーイングの向上等の課題解決につなげ、良好な都市環境の形成を図ることを目的としておりまして、グリーンインフラの考え方と共通するものであると認識をしておるところでございます。 例えば、民間事業者等の緑地確保の取組を認定する制度におきましては、グリーンインフラとして、植物の蒸発散作用を通じた気温上昇の抑制機能や雨水の貯留浸透機能などの緑地が有する機能を活用した取組を評価することとしたいと考えてございます。さらに、地方公共団体が定めます緑の基本計画におきまして、都市緑地をグリーンインフラとして効果的に活用する方針を記載することが望ましい旨を国が策定する基本方針においてお示しをしたいと考えております。 海外の事例といたしましては、例えば米国のポートランドにおきましては、持続的な雨水管理等の観点から、土壌や植生により雨水の流出を抑制する街路の植栽帯、あるいは屋上緑化等の導入を推進していると承知をしております。 引き続き、このようなグリーンインフラに関します技術の収集あるいは紹介等を進めることによりまして、進めるとともに、済みません、本法案における基本方針や認定制度を通じましてグリーンインフラの取組を積極的に推進していきたいと考えてございます。 以上でございます。
- ○森屋隆君 ありがとうございます。 グリーンインフラ、防災・減災、あるいはウエルビーイングにも、住んでいる中で、そういった幸福度というんでしょうか、そういったところにもいいことなんだということであれば、認識もなかなか私はまだまだされていない部分があると思いますから、やっぱり積極的にそういったところを推進してもらいたいなと、こういうふうに思っています。 次に、この法案にある機能維持増進事業というんですかね、これはどのような事業が対象になるのか、これまで公共団体が行ってきた維持管理業務と何が違うのか、そして何を期待しているのか、この具体的なところも説明できればお願いしたいと思います。
- ○政府参考人(天河宏文君) お答えいたします。 特別緑地保全地区におきましては、長期間にわたりまして適正な管理が行われず、ナラ枯れ等の病害虫被害、あるいは台風による倒木等が発生いたしまして防災上の支障が生じている事例、あるいは成長が早い竹に覆われまして樹林の生物多様性が低下する事例、こうした緑地の機能が十分発揮されていない状況が見られるというところでございます。 今回創設いたします機能維持増進事業は、このような樹林の一部を伐採し、萌芽更新による樹林の再生を図るほか、竹を全面的に伐採し雑木林へと再生する事業、こうした事業等を想定をしておるところでございます。 このように、機能維持増進事業は、例えば落ち葉かきとか下草刈りのような通常の維持管理とは異なると考えておりまして、機能維持増進事業が実施されることによりましてその後の適切な維持管理が行われれば、CO2の吸収源や生物の生息・生育空間としての機能が発揮されることが期待をされております。また、機能維持増進事業の実施によりましてその後の維持管理が容易となりますので、維持管理活動に住民の方でありますとかNPOの方でありますとか多様な主体の参画が促進され、地方公共団体の緑地管理コストが低減されるということについても期待をしているところでございます。 以上でございます。
- ○森屋隆君 ありがとうございます。 次の質問なんですけれども、この機能維持増進事業、今答弁あったんでしょうか、この樹木の皆伐、択伐というんですかね、これの行為制限の対象外とされたということは今の説明に含まれているということでしょうか。
- ○政府参考人(天河宏文君) 今の御指摘でございますが、特別緑地保全地区におきまして、木や竹の伐採は、市の区域にあっては市長の、町村の区域にあっては都道府県知事の許可を要する行為とされておりまして、当該行為が緑地の保全上支障があると認めるときは許可がなされないとなっております。 本法案におきましては、市町村が策定します基本計画に機能維持増進事業の実施の方針を定めるということになっております。これによりまして、特別緑地保全地区に係る許可等を行う者が当該事業については緑地の保全上必要であることを確認できるということから、行為規制の対象から除外をしております。 具体的に申しますと、町村が緑の基本計画に機能維持増進事業の実施の方針を記載するときは、町村内の特別緑地保全地区に係る許可の主体であります都道府県知事に協議して同意を得る代わりに、これによりまして都道府県知事による行為規制の対象外とするということとしております。市につきましては、機能維持増進事業の実施を記載する場合には許可の主体が市となるため、都道府県の協議規定は不要となります。 いずれにしましても、基本計画に書くことによりまして、機能維持増進事業の許認可、これを不要とするという仕組みでございます。
- ○森屋隆君 承知しました。ありがとうございます。 次に、これも先ほどありましたけれども、この都市緑化支援機構、国指定法人制度が創設されるんですけれども、一体どのような団体が指定をされるのかということと、そこにある、この全国を通して一に限るとした理由ですね、そして、そもそも全国規模でこの様々なその業務をカバーできるような組織というのは何か存在しているのかどうかという、このちょっと三点を簡潔にお願いします。
- ○政府参考人(天河宏文君) お答えいたします。 都市緑化支援機構の指定対象でございますが、都市における緑地の保全や緑化の推進を目的としております一般社団法人又は一般財団法人としておりまして、公募により選定をし、指定することを想定をしております。 また、支援機構を全国を通じて一に限る理由でございますが、機能維持増進事業、これは高度な専門的知見と学識経験者や造園事業者等のネットワークを必要とする非常に難度の高いものでありますことから、一つの法人に担わせることによりましてノウハウの更なる蓄積とネットワークの強化を集中的に行う方が適切であると判断したことによるものでございます。 さらに、その緑地保全や緑化の推進を目的といたします既存の公益法人の中には独自の緑地等の評価・認定制度を持っているところがございましたが、こうした評価・認定制度につきまして、学識経験者や技術者等のネットワークを活用して全国各地の事業箇所に赴いて緑地等の調査を実施し、緑地等を評価、認定している団体があることも確認をしております。支援機構の想定される事業箇所、先ほど現時点で年間数件から十件と申し上げましたけれども、この程度であれば、同様の業務の進め方によりまして全国で事業を行うことは十分可能と考えているところでございます。 以上でございます。
- ○森屋隆君 答弁踏まえまして、高度な専門知識が必要であるということであったと思うんですけれども、ここに書かれている技能的能力を有するものということなんでしょうけれども、具体的なイメージをちょっと教えていただきたいと思います。
- ○政府参考人(天河宏文君) お答えいたします。 都市緑化支援機構に求められます技術的能力といたしましては様々なものがございますが、例えば荒廃した樹林地におきまして地形あるいは植生を踏まえまして萌芽更新や樹種の転換による樹林の再生を確実に実現するための整備計画の策定、あるいは、生物多様性を確保する観点からの指標となる種あるいは目標となる種の設定、外来種への対応方針、目標とする植生を実現するための維持管理方針の策定、それから、樹木によるCO2の固定量を確保する観点からの樹木の育成計画あるいは伐採木の活用方針、それから、斜面地における高木の伐採など作業を安全に行うための施工管理計画の策定、こうしたことを適切に実施する能力、こうしたことが考えられるところでございます。 以上でございます。
- ○森屋隆君 ありがとうございます。 質問、重複するかもしれません。 令和五年八月に、首都圏の九都県市首脳会議から、緑地保全の推進に係る税制上の軽減措置及び国の財政支援策の拡充等に関する要望書が関係大臣宛てに提出されています。その要望書の事項の一つとして、この緑地の買入れに係る新たな主体の創設を掲げています。 今回の法案では、その要望を踏まえる形で、この地方公共団体以外の者が短期的にこの緑地を取得し、その後、地方公共団体が当該緑地を買い入れることができる制度を創設したんでしょうか。その実効性についても少し疑問を感じています。先ほど、一、二件ということもありました。そういった要望を踏まえてこれができたのかどうか、その辺のところについてお聞かせください。
- ○政府参考人(天河宏文君) お答えいたします。 九都県市首脳会議は、従来から緑地保全に意欲的に取り組んでこられました地方公共団体の首長さんから構成をされており、現場での様々な課題を踏まえた提言をいただいているというふうに理解をしております。今回創設いたします都市緑化支援機構は、その提言にも対応する制度であると考えてございます。 支援機構によります特別緑地保全地区の土地の買入れ等の業務は、地方公共団体が行う買入れの全てに対応することを前提としたものではなく、例えば、大規模な緑地の買入れ申出に対しまして財政上の制約から買入れに長期を有する場合、それから支援機構が機能維持増進事業を行う必要が特に高い場合等につきまして、地方公共団体からの要請に基づいて実施をされることを想定をしております。 支援機構の要請の数でございますが、現時点で正確に推定することは困難でございますが、現在の全国の土地の買入れ状況を踏まえますと、先ほど申し上げたような一部のケースになるものと認識をしておりまして、件数といたしましては年間で数件から十件程度ではないかと考えております。 数は少ないんでございますが、緑地は一度失われますとこれを再生させることは極めて困難でございます。件数は少ないんですけれども、今生き残っています緑地は非常に貴重な緑地でございますので、その保全を少しでも着実に進めていきたいという観点から今回提案をさせていただいております。 以上でございます。
- ○森屋隆君 ありがとうございます。 加えて、この九都県市首脳会議の要望書では、我が国は当然少子高齢・人口減少社会に直面しています、これまでの緑地の維持、そういったところに携わっていた人の高齢化、後を継ぐ後継人もいないと、そして税収の減少による緑地の維持管理、保全、こういったことは難しくなっている、そして財源の不足など課題が様々あります。認識は共有できているんだと思います。 そんな中で、このような地方公共団体の取組が大変厳しい状況にある中で、国による更なる支援充実が私は不可欠なんだろうと思っていますけれども、今回の法改正では具体的にどのような支援、先ほどから説明あるのかもしれませんけど、これが講じられているのか、加えてその効果、どのように予測しているのか、これについてお聞かせいただきたいと思います。
- ○政府参考人(天河宏文君) お答えをいたします。 御指摘のとおり、緑地管理を行っている住民団体等におきましては高齢化等が進み、地方公共団体におきましても緑地保全に係る十分な財源の確保が難しい状況があると認識をしております。 本法案におきましては、これまで特別緑地保全地区において緑地の管理が十分に行き届かず荒廃が進んでいる状況を改善するため、機能維持増進事業というのを新たに法律に位置付け、当該事業を社会資本整備総合交付金の対象として地方公共団体を財政的に支援するということとしたところでございます。 また、例えば、川崎市におきましては、緑地の維持管理活動の新たな主体として、住民団体に加えまして、企業等の参画を推進をしております。機能維持増進事業の実施は、荒廃した緑地の状態を改善しまして、その後の緑地の維持管理を容易にするということがございますので、企業や住民団体の方の参画を促していくと、そうした効果もあるのではないかと考えております。 国土交通省といたしましては、今後定める基本方針におきまして、多様な主体による緑地管理の重要性、これを位置付けることによりましてこうした取組を促進していきたいと、このように考えております。 以上でございます。
- ○森屋隆君 ありがとうございます。 課題は大きいですから、やっぱりその予算だとか、やっぱりその公共団体に対します支援策、これが必要なんだなと、こんなふうに感じています。 最後になるかも、あっ、最後の質問ですね、もう時間ありませんから、大臣に質問したいなと思います。 令和五年七月の、香川県高松市においてG7都市大臣会合、これが開催をされたと思います。斉藤大臣が議長として、持続可能な都市の発展に向けた協働テーマ等議論がなされました。お疲れさまでございました。 このG7の都市大臣会合のコミュニケの一節には、緑地と水辺の空間、インフラは、人のニーズと自然を支え、市民の健康とウエルビーイングを貢献すると。先ほどからやり取りの中でこれ言われていると思いますけれども、この持続可能な都市を推進する上で重要な役割を担っている、こういうふうに会合の中ではあったんだと思います。 この文言がありますけど、我が国においても緑を守り育てるための環境整備に強力に推進することは極めて重要であり、今回の法改正とそれに伴う税財政処置ではその目的が本当に果たされるのかなと、こんなふうにも感じているんですね。課題は大きいんですけれども、何か意外と小ぶりなんじゃないかなと思うところがありまして、そういった面も含めて、最後に国土交通大臣に、今後のこの都市緑地の推進に向けた決意も含めてお聞きをしたいと思います。大臣、よろしくお願いをいたします。
- ○国務大臣(斉藤鉄夫君) 私、G7の都市大臣会合を二回経験させていただきました。 最初はドイツであったんですけれども、そのときにはこの都市緑地というのはほとんどテーマになりませんでした。アメリカが提案したアフォーダブル住宅という、みんなにいかに住宅を提供するかということがテーマだったんですが、日本で昨年行った、高松の栗林公園の中で行って、栗林公園の中を散策し、そして池で船にも乗ってということだったわけではありませんけれども、コミュニケの中にこの都市緑地のことをしっかり盛り込みました。気候変動対応、生物多様性の確保等の多様で複雑な課題解決には、都市とその周辺地域に緑地を確保すべきであると。それから、そのためには多様な主体の協働、さらには国の役割が重要であると、このように共通認識を得てコミュニケにも書き込んだところでございます。 これらの認識を基に、今回この法案を用意させていただきました。主には、先ほど局長から答弁いたしましたように、まず地方自治体をしっかり助けるということ、それからもう一つは、民間の力を借りて、その民間地においてもこの都市緑地、頑張っていただく、官民協力でやっていくと、この二点が今回の法案の主の点ではないかと思います。 確かに、まだ予算も少ないですし、スタートしたばかりでございますけれども、しっかりこの都市緑地の充実に向けて頑張っていきたいと、このように思っております。
- ○森屋隆君 終わります。ありがとうございました。